う~ん。もっと売れてもいい歌集だと思うのですが。
発売直後に買ったので、もう数ヶ月間、枕元に積んでいて、気が向いたらパラパラとめくっている。
切れ味のいい歌の詰まった歌集である。
社会に向けた風刺が効いているのだが、風刺的な歌にありがちな、高所から見下ろすような不快感はない。切っ先は作中主体にも向いて、なさけなく、みっともない自画像が等価に並んでいるのである。逆に言うならば、自分が風刺の対象でもあるから、安心して作中主体の目に沿って読めるとも言えるだろう。
心に残った歌を10首ピックアップします。
狂気ではない 丁寧に流される言葉はどれも馬鹿げた正気
自転車を降りたる後のしばらくを競歩の如き歩行となりぬ
うたかたに消えてこそ人いつまでも消えぬ泡など洗剤の泡
輪廻など信じたくなし限りなく生まれ変わってたかが俺かよ
偶像の破壊のあとの空洞がたぶん僕らの偶像だろう
空白をさらに大きな空白で埋めて宇宙はいま伸び盛り
「地球とは」こう主語にして語るときあなたはすでに傲慢である
LAWSONへSEIYUそして武富士へだんだん青くなり死ぬだろう
ああ闇はここにしかないコンビニのペットボトルの棚の隙間に
浅田飴なめると彼方から呪文あさやけはあめあさやけはあめ
*8首目、LAWSON、SEIYU、武富士はロゴ(?)のバックの色が後ろになるほど黒の割合が減って青が濃くなっていたように思うのですが、読み間違っているかなあ?
現在の西友のロゴは調べて見ると赤いんだけれど。
SEIYUは牛肉偽装事件が背後にあるのかな?