ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー(어셈블리) ☆☆☆☆
2015年のKBS水木ドラマ。全20話
演出 ファン・インヒョク(「月桂樹洋服店の紳士たち」)、チェ・ユンソク
脚本 チョン・ヒョンミン(「チョン・ドジョン」
出演者
チョン・ジェヨン(ジン・サンピル役)、ソン・ユナ(チェ・インギョン役)、テギョン(キム・ギュファン役)、チャン・ヒョンソン(ペク・ドヒョン役)、キム・ソヒョン(ホン・チャンミ役)
最高視聴率は6.0%(AGBニールセン)
国会を舞台に、一人の馬鹿正直な男が政治力学が優先する勢力の抵抗の中、民衆のための、本当の政治を実現していく話。
私はBSジャパンのカット版を見ました。
話数拡大なしなのでどうかな?と思ったのですが、あまり気にならず、返ってスピーディーな展開になってよかったのかもしれない、と思いました。
終盤になり、ペ・ダルス法の具体的な内容は何?だとか、ドヒョンとチャンミの結末がどうなっているのか良く分からない、とかあったのですが、ノーカット版でそのあたりを少し探して見てもやっぱりわからなかったので、カットの問題じゃなかったのかしらね。(全部をしっかりチェックしたわけではないけれど)
勢いにのまれるように面白く見たのですが、終盤あたりから、現在の世界的な政治の状況等のことが頭に浮かび、ドラマとしては面白いけれど…などと、ちょっと考えたりもしました。
というのは今は世界中でポピュリズムが躍進している時代。
大衆にとって耳当たりのいい言葉を振り撒くことで人気を獲得する人たちが次々と現れているんですよね。
ドラマの中のサンピルはいい人だけれど、こういうタイプのドラマに単純に感動することに、ちょっと抵抗があるんです。
ドラマのストーリーはそうはならなかったけれど、一歩間違えればポピュリストの大統領誕生物語にもなってしまいそうな危うさを感じたのね。
彼の演説スタイルからも、実在する政治家などが思い浮かびましたし…。
話がそれました。
ドラマに話を戻すと、このドラマでいちばん面白かったのはサンピルとインギョンの信頼に基づく二人三脚。
信念はあるけれど政治については全く素人のサンピルと、政治の中枢部にいて、政治工学については抜群のセンスを身につけているインギョン。
はじめは水と油の二人が、お互いを理解するにつれ、他のパートナーは考えられないような関係性を築いていくんですね。
そして、周りの人たちもサンピルの独特なスタイルに巻き込まれ、本気でサンピルを助けようとし始めていくのは、こういうタイプのドラマでは基本形ですが、やっぱり見ていて気持ちがいいです。
俳優陣もまた、実力のある人たちを起用しているようで、彼らの演技もまた、見どころでした。
主演のチョン・ジェヨンは映画を中心に活躍しているようですね。
あまり映画を見ない私でも「王の涙-イ・サンの決断-」や「トンマッコルへようこそ」「神機箭」などでお目にかかっています。
ソン・ユナは、ちょっと前まで、うるさい女の役ばかりやるな、と思っていたのですが、(この作品よりも後に作られた作品ですが)「K2」での彼女の演技の深さにびっくり! 中年の彼女の演技が楽しみです。
そして、このドラマで驚いたのがキム・ソヒョン。
彼女、「妻の誘惑」での悪女役があまりにも印象的で、その後何を見ても、その印象がついて回っていたのですが、今回はそのイメージを一掃。
今回は優雅で理知的、というイメージを売りにして国会議員になった人物を演じているのですが、完璧にそんな人に見えました♪
若手の中心人物では2PMのテギョンが復讐を胸に秘めて主人公のオフィスにもぐりこむ人の役を演じていました。
演技はそんなにうまい方ではなく、(ファンの方、すいません!)内面は表す演技は単調ではあるのですが、持ち味の清潔感を目いっぱい生かしたキャラでした。
彼の持つさわやか感って、貴重だと思います。
ストーリーはこんな感じです。
ジン・サンピルは造船所で溶接工をしていたのですが、突然解雇されたため、仲間たちと共に法廷闘争をしていたのですが、3年の歳月を費やした挙句、最高裁で敗訴してしまいます。
ちょうどそんなときに彼らの住む町、キョンジェ市選出の国会議員が収賄により逮捕、補欠選挙が行われることになります、
サンピルたちの法廷闘争のリーダーを務めていたのはペ・ダルスで、彼のもとに社会党のキル・ヘヨンが訪ねてきて、社会党から国会議員の補欠選挙に立候補するように要請します。
ダルスは自分が国会議員になれるわけがない、とサンピルに法廷闘争の委員長を譲り、サンピルが立候補するように頼みます。
一方、与党の国民党は親青(親青瓦台)派と反青(反青瓦台)派の二つの派閥に別れているのですが、親青派のリーダーペク・ドヒョンは適当な候補者がおらず、頭を痛めています。
その彼のもとを訪れたのはドヒョンの後輩で倒産寸前の政治コンサルティング会社を営むチェ・インギョンです。
彼女はキョンジェ市の補欠候補に自分自身を売り込むのですが、ドヒョンが選んだのは政治の素人サンピルです。
じつは、ドヒョンの出ている選挙区に強敵が現れることを知って、1年後の改選時に、父が市長をしていたキョンジェ市に選挙区を鞍替えしよう、とそれまでの間のつなぎとしてサンピルを選んだのね。
断るサンピルでしたが、闘争拠点で警察との乱闘が起き、多くの仲間たちが傷ついたことから、ドヒョンの、公認候補になれば会社と闘争メンバーとの話し合いを取り持つ、との条件を受け入れ、立候補を決めます。
ドヒョンは選挙本部の参謀としてインギョンを送り込みます。
その甲斐もあって、サンピルは当選を果たすのですが、直後に、高いクレーンに上がったペ・ダルスは転落死。
サンピルの仲間を思っての行動は会社側に寝返った裏切り行為、と思われ、仲間たちからの恨みを一身に受けることになります。
そして、ダルスには息子のギュファンがいます。でも、ギュファンの母とは離婚しており、母はギュファンを連れて再婚。ギュファンは新しい父の名字に変わり、ダルスとは別れて暮らしていました。
それでもダルスの願いであった警察官になることを目指していたのですが、父の死後、採用試験の面接の場でダルスへの侮蔑的な言葉を聞いた彼はそれを黙っておられず、反論して面接会場を飛び出してしまいます。
そして、父の復讐を果たすため、サンピルの事務所のインターンとして働くことにするギュファンです。
さて、議員になったサンピルですが、ドヒョンは彼を1期限りの捨て駒として彼を利用しようとします。
ところが、失言・失態はいろいろやりますが、庶民の立場というところにはブレのないサンピル、ドヒョンの思うようには動きません…。
そして、最初はドヒョンのために動いていたインギョンも、徐々にサンピルのために動き始めます…。
私はいろいろ、変なことを考えてしまいましたが、難しいことはあまり考えず、ダイナミックな話の流れに身を任せ、単純に話を楽しめば面白い作品なのではないかと思います。