キミに猛ダッシュ~恋のゆくえは?~(란제리 소녀시대=ランジェリー少女時代) ☆☆☆☆
2017年KBSの月火ドラマ、全8話(BS12は全10話)
演出 ホン・ソック
脚本 ユン・ギョンア
出演者
ボナ(イ・ジョンヒ役)、チェ・ソジン(パク・ヘジュ役)、ソ・ヨンジュ(ペ・ドンムン役)、イ・ジョンヒョン(チュ・ヨンチュン役)、ヨ・フェヒョン(ソン・ジン役)、ドヒ(シム・エスク役)
原作はランジェリー少女時代の同名小説
最高視聴率は5.3%(TNmS)
1979年の大邱(テグ)を舞台に若者たちの甘酸っぱくほろ苦い青春を描いたノスタルジック・ラブコメディ
1979年といえば日本ではお気楽な時代だったけれど、韓国では軍事政権下。
「応答せよ1988」の時代は前年の「民主化宣言」を受け、どんどん民主化が進んで行っている時代でしたが、1979年は軍事政権への不満が高まっているものの、まだまだ民主化には程遠い時代。
このドラマの扱っている時期のすぐ後に朴正煕大統領が暗殺され、少しの間だけ、希望が見えた日々がありますが、間もなくまた、全斗煥の粛軍クーデターと光州事件の武力鎮圧で民主化が遠のく、といった流れになります。
ノスタルジックと言っても、日本で昭和を懐かしむような気もちとは、ちょっと違いますね。
でも、時代のために生き辛いことはあっても、いつの時代の少年少女たちも生き方を模索しながら恋に友情に一生懸命。
1979年という時代を青春真っ只中に生きた人たちの物語です。
私はBSの10話編集版を見たんですが、見終わってから、これはノーカット版で見た方がよかったかもしれない、と思いました。
単純なラブコメだと思っていたのですが、時代の影が所々にさしているところがひとつの魅力だったように思います。
*このドラマのアンケートを作りました。ご覧になった方々に参加していただけると嬉しいです♪
(story)
女子高に通う高2のジョンヒは親しい友人たちと共に男子校の生徒たちとの合コンに行きます。
その中で、この子だけは避けたい、と思っていたドンムンに一目惚れされてしまうジョンヒ。
ジョンヒの方はその後まもなく、大邱の女子高生たちのあこがれの的、ソン・ジンと偶然知り合うことになり、ジンに一目惚れしたジョンヒは彼に会うため、必死な毎日です。
そんなある日、自転車でジンを追いかけていて、車にぶつかりそうになり、転んでしまうジョンヒ。
気付いたジンが助けてくれ、薬局まで負ぶってくれて舞い上がるジョンヒです。
でも、ジョンヒがぶつかりそうになった車に乗っていた少女ヘジュもジョンヒを助けてくれて、ジンはどうやら彼女に一目ぼれした感じです。
ヘジュはちょうどソウルから引っ越ししてきていたところで、ジョンヒとは学校で再会します。
同じクラスになったジョンヒと親しくなろうとするヘジュですが、ジョンヒは美人で頭もよい彼女が気に入らず(実は自分でも気づいていないけれど少し嫉妬しているらしい)わざと無視するのですが、あきらめないヘジュ。
やがて親友になって行く二人です。
そんな関係になっても、ジョンヒはヘジュとジンが付き合うんじゃないか、と心配しているのですが、ヘジュは実は薬局で手伝いをしながら、町内の雑用もこなす男ヨンチュンに思いを寄せ始めているようです。
ヨンチュンは町内では評判のよくない男で、不良だとみなされ、彼が育てている妹も、実は彼の娘だ、なんて噂もあります。
そんな中、ヘジュの父親が警察に捕まります。
反政府的人物だ、と要注意人物としてマークされていたのね。
ヘジュをちやほやとしていた教師たちの態度も変わり、受難の時期を迎えるヘジュ・・・
こんな感じで、最初はみんな、片思いをしているってところからスタート。
そしてジョンヒとヘジュの友情も始まります。
私はこのドラマ、半年ぐらいのことを描いたのか、と思っていたのですが、見終わってから確認して見ると、ヘジュが転校してきたと思われる日が9月10日(日めくりで確認)で。去って行った日が10月3日(映画のチケットの日付)。
1か月にも満たない間の出来事なんですね。
これはちょっと、無理があるような…
このドラマはキャスティングすら2週間前に決まったという、せわしないスケジュールで放送されたための影響かもしれませんね。
急遽、違う季節を舞台にするのは難しいですし、前には夏休み、後ろには朴正煕の暗殺がありますから、もしかしてちょっと無理に詰め込んだ?なんてことも考えました。
でも、もう少し長い期間を扱った話だとすると、揺れながら進んでいく恋や友情の話がとってもリアルでいい感じでした。
主人公たちの感情がとても自然でみずみずしくて、これが私がこのドラマに感じた一番の魅力でした。
そんな彼らを取り巻く状況といえば、女性は信じられないぐらい差別されています。
ジョンヒには双子の兄がいるのですが、その扱いには天と地ほどの差があります。
それに対し、ソウルからやって来たヘジュの家族は父と娘が友達のように接しており、そういう仮定を目にしたジョンヒの心の動きもリアルに描かれています。
ところで、オリジナルタイトルの「ランジェリー少女時代」のランジェリーってなんだろう、と。気になっていました。
日本では女性用下着を指す言葉ですが、韓国では違うのだろうか?なんてことも思ったのですが、日本で使われている意味とほとんど同じだったように思います。
まず、ジョンヒ達女子高生はランニング型の下着着用が規則だし普通なんですが、彼女たちの憧れは、肩のところが紐になった、キャミソール型の下着。
また、学校での罰として、下着を使った罰というのが出てきます。
多分、ブラジャーを引っ張ってはじく、といったものではないかと思うのですが、その罰に対して異を唱えるのがヘジュ。
この二つのエピソードを見ると、ランジェリーは少女たちの抑圧と憧れを象徴するもののようですね。
ドラマのラストに関しては、いいと言えばいいんですが、ヘジュの選択に関してはどうなのかなあ。
希望的なラストで、この年頃の私だったら無条件にいいラストと思っただろうと思うのですが、人生を重ねた今の私から見ると、危うい、と思うし、こんなに早い時期に人生に関わる大きな選択をして、彼女は幸せになれるんだろうか、と思ってしまうんですよね。
まあ、このドラマのキャラのヘジュだったら、この後辛いことが起こってもきっと乗り越えていくと思うには思うんですが、親目線で見てしまうとね…
ドラマの方はこんな感じで、いちおう希望に満ちたラストだったんですが、原作の小説では後半、まるで違った展開になっているそうなんですよ。
こちらではヘジュは、とんでもなく不幸な目に遭う少女として描かれているようで、より現実の厳しさを描いた作品になっているようです。
付け足しですが。
このドラマの冒頭、少女たちがダンスしているシーンから始まりましたが、韓国版で冒頭を見直しているとABBAの曲が使われていたんですね。
日本版では曲が差し替えられていましたが…
流行っていた曲を聞くとその時代のことを思い出すことがよくありますが、この曲で私は一気に日本の1979年あたりの雰囲気を思い出し、ことさら日本との時代の差を感じました。
ほんの数秒なのでカットされるのも分かるのですが、これはちょっと惜しかったかなあ…