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『ざらめ』梶原さい子歌集



『ざらめ』梶原さい子歌集_d0060962_21461366.jpg
結社誌の書評欄に書くために読んだ本です。
わたしのところには、どうも、若い人の本がよく回ってくるみたい。


『ざらめ』梶原さい子歌集 青磁社
(楽天ブックスにリンクしています)


「塔」所属の著者の第一歌集。二十代後半から三十代前半の作品を纏めたと、
あとがきにあります。
日常的な風景を描きながらも、その隅にひそむ不可思議のものを作者は
掬い取っていく。
昔話や童歌と同質の、存在の本質そのものに係わる謎や、恐ろしさのようなものが
この歌集からも、じわじわ滲み出して来るようです。

・複写機に光とほりてゆくときの外にあをあを雨燃えてゐき

・サンプルのオムライスまで溶けてゐる商店街をぬらぬら歩く

・山姥も来る冬憂しや大吉の出るまで御籤引かさるる里

・雲がみな彼の世へ吸はれゆくやうな一点透視図法のゆふべ

・吊革に手を縛りつけ春をただ ただただ窓をよぎらせてゐる

・鉄管をとほりてのちに夕暮れへ放たれてゐよ 朱きみづ美(は)し

・みんなざらめになつてしまふよ刻々と秋の日暮れが失はれゆき

著者の勤め先であった、女子高での生活から生まれた歌にしても、詠まれている
少女たちや学校はこの世とあの世の境にあるかのよう。

・千人が朝やつてきて千人が夜に帰りきたぶん帰りき

・答案を束ぬるゴムの弾性にかすかに打たる冬の教室

・鳥の啼く昏きを森と呼ぶならば森をいくつも孕む教室


他にも、こんな歌に注目しました。

・楽天がいつかわれらを捨つる日を怖れつつ東北に冬は来(く)
by kirikoro | 2006-05-13 21:57 | 読んだ本・聴いたCDなど | Comments(0)